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中学入試 入試直前期の過ごし方 「親は……」 その1

中学入試 入試直前期の過ごし方 「親は……」 その2

中学入試 入試直前期の過ごし方 「親は……」 その3

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その1

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その2

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その3

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その4

中学入試 入試直前期に成績が下がった?! 

苦手科目の克服方法について 

志望校を変更する

具体的な学校名は、私が主に活動しております愛知県内の学校名を挙げますが、注意しておきたいことは、どこの地域でも同じですから、ご自身で学校名を置きかえて読んでみて下さい。

お願い
ある学校に合格するには、模試でどの程度の偏差値を取ればよいのかといった目安があります。そして、この偏差値でそれぞれの学校を序列化するような風潮があります。しかし、この偏差値が学校の善し悪しを示すものではないことは言うまでもありません。ただし、以下の文章では、難易度をもとにした「上・下」「上位・中堅」といった言葉がでてきます。こういった、言葉そのものが不愉快だと思われる方は、お読みにならないで下さい。

さて、愛知県内の主な私立中学で、入試日が重なるのは、男子では東海中学(以下、東海)と南山中学男子部(以下、南男)、女子では愛知淑徳中学(東京都の淑徳中学ではありません。以下、淑徳)と椙山女学園中学(以下、椙山)になります。合格難易度を偏差値で表した場合、模試の主催団体により違いはありますが、いずれも前者の方が難易度が高いとされています(偏差値で、5〜10ポイントの差。余談ですが、今回改めて各模試のデータを見比べてみたのですが、中堅校の難易度順位は模試によりかなり違っています。多分データが少ないせいでしょう)。

まず、女子の場合ですが、淑徳、椙山の約一週間前に、難易度が両校の間に位置するとされている金城学院中学(以下、金城)の入試があります。その合格発表が済んだ後の受験になりますから、その結果を見て判断できます。したがって、注意と言っても、金城がもし不合格でも、気持ちを切り替えて椙山の入試に臨めるようにしてあげましょうという、一般的なものになります(とはいえ、不合格という結果から一週間もたたないうちに次の入試を迎えるのですから、大変です。特に金城が最初の受験校であった場合、それが不合格ともなれば、その子にとって「人生初の不合格」である場合もあります。そのショックといったら、並大抵のものではないでしょう。椙山の過去問の再チェックなど、問題に当たるといった具体的なスケジュールを組んで、目の前の課題に目を向けさせるようにしたいものです。そしてなにより、保護者の方は、お子さんの前で動揺を見せないように。キツイでしょうが、大人ですからこらえて下さい)。ただ、後の男子の場合でもふれますが、椙山を第一志望に受験準備を進めてきた子も大勢いるのですから、しっかりとした準備が必要なのは言うまでもありません。

男子の場合ですが、東海、南男の試験日より前に、どちらを受験するかの指標となるような、女子の金城にあたる学校の入試がありません。愛知中学、名古屋中学といった学校がありますが、いずれも南男と同じくらいかそれよりやや難易度が低いとされています(各模試主催団体により、違いがあります)。
となると、やはり最後の模試の結果をもとに判断するしかないということになります。

その際気をつけたいのは、それまで東海を第一志望校として準備をしてきて、ここで変更して南男を受験する場合です。
特に大手塾の場合、あまり喜ばしいことではないのですが、子どもたちが「どこを受験するかによって、お互いにお互いを『格付け』している」ことがよくあります。そういう「格付け意識」があると、難易度が低いとされている学校に志望校を変更すると、「合格したも同然と考えてしまう子」と「自分はダメなんだと思ってしまう子」が出てきます。

まず、前者について述べます。厳しい言い方になりますが、この変更は、第一志望校の合格の可能性が低いために行ったものであり、第一志望校合格の実力を持ちながら、あえて変更したわけではありません。また、例に挙げている南男は、東海とは異なるスクール・カラーを持っており、東海とは別に高い人気を誇る学校でもあります(東海に合格できる力がありながらも、南男を受験する受験者も少なくありません。難易度は確かに東海が上なのですが、その学校のランクや進学先だけで受験校を決める受験生ばかりではありません)。何が何でも南男に行きたいという受験生も大勢いるのです。受験校を変えるきっかけとなった同じ模試で、南男合格に対して低い判定をとってしまい、今、死にものぐるいで南男合格を勝ち取ろうとしている受験生もいるのです。直前期の二か月を、片方は「合格した気持ち」で過ごし、片方は「必死」で過ごしたとしたら、最終模試での成績の数ポイントの差など簡単に逆転してしまいます。
これまでは、東海のための準備をしてきたのでしょうから、南男の過去問は充分に検討できていないと思います。しっかりと取り組ませきちんと合格点が取れるまで準備させましょう。

後者の「自分はダメなんだと思ってしまう子」ですが、対応は、女子で「金城が不合格で椙山を受験する場合」とよく似ていますが、「不戦敗」になるわけですから、お子さん自身、不合格以上に釈然としない思いを抱くかもしれません。自身を喪失しそうな子は、志望校を変更することを伝えたり話し合ったりする前に、保護者の方なら予想がつくと思います。ですから、子どもに話を切り出す前に、「そもそも、何を目的とした私立中学受験なのか」、「保護者として子どもに何を求めているのか」、そして、今回の決断はそのための決断であるというように話が進められるよう、準備をしておく必要があります(ご夫婦で話すのであれば、ある程度の考えのすり合わせが必要です)。そのうえで、やはり他の場合と同じく、しっかりと南山中学男子部受験の準備をさせましょう。

最後になりましたが、このような受験校の変更を「おまえの人生なんだから、おまえが決めなさい」という保護者の方もいらっしゃるようです。お子さんの性格、これまでの保護者の教育方針などによってケースバイケースだとは思いますが、一般論としては、小学6年生にそういった決断をさせるのは、重すぎると思います。決断には、責任が伴います。その責任を十二歳に背負わせるのは、ちょっとかわいそうです。子どもに恨まれることも覚悟で、その責任は大人が背負うべきではないでしょうか(完全なる私見ですが)。

中学入試 入試直前期の過ごし方 「親は……」 その1

中学入試における直前期の過ごし方について、私の考えをお話ししたいと思います(このコラムをご覧になっているのは保護者の方だと思いますので、「過ごさせ方」になりますかね)。
直前期の過ごし方といっても、冬休み中は塾の指導があると思いますから、それぞれお通いの塾のスケジュールにあわせていけばよいと思いますし、実質、それ以外の選択肢はないと思います。
ですから、考えておかなくてはならないのは、その後、3学期に入ってからということになります。
関西地区だと数日、関東地区だと20日ほど、中部地区だと数日からひと月ほどになるでしょうか(もちろん、これらの地区でもさらに長期にわたる場合もあるでしょうが)。
結論から言えば、受験生本人が「心やすらかに、入試日を迎えること」を第一に考えるべきだと思います。
よく、「直前には『未見』の問題は解くな」などと言われますが、これも要は、「新しい問題(集)に手をつけて、解けない問題を発見して動揺する」より、「今までに解いた問題を見直し、あーこうだったなぁ、こういうときはこうするんだったよなぁと確認し、よし解ける解けると心を落ち着けなさい」という意味だと思ってよいでしょう。
具体的には、すでに解いた過去問の見直しをするのが一般的だと思います。
とはいうものの、受験校頻出の分野で、かつ、弱点のまま残っている、などという分野があるなら、その克服に最後の時間を充てる場合もあるでしょう。
だたし、この場合には、注意が必要です。
まず、本当に補強するべきなのかどうかの見極めが必要です。
あとで述べますように、特定教科の特定分野に「特化する」のには危険が伴います。
その分野を捨てても、他教科やその教科の他分野で、つまり、4教科総合で合格点に充分達する力があるのなら、「特化すべきではない」と思います。
保護者の方の中には、「1教科ごと、すべての教科でそれぞれ合格点に到達させよう」と考える方もいらっしゃいます(お気持ちはわかります)が、1教科ごとの「足切り」がないのなら、4教科トータルで合格点に達していれば合格を勝ち取れます。
得意教科で20点の余裕があり、他の2教科は合格点程度取れるのであれば、苦手教科は合格点より20点低くても合格できます。余裕を見て、4教科で、もう5点ずつ得点力をあげれば充分でしょう。
ですから、まずは、本当にその教科のその分野に「特化すべきかどうか」をしっかりと見極めましょう
それでも、「特化する必要がある」と判断した場合は、次のことに注意をしてください。
必要なのは、ある特定の教科の特定の分野にだけ集中することの危険性の認識です。
他教科はもちろん、同一教科でも思考が全く異なる分野もあります(理科や社会の分野の違いは、大学入試では科目の違いになっていくほどです)。それらの問題に全く触れることなく何日かを過ごすのは、感覚が鈍る、できあがっていたはずの思考回路がショートする可能性があります。弱点を補強したい分野に多く時間を配分するのは仕方がないにしろ、「それ『のみ』に特化する」ことは他に与える影響が大きすぎると思います。他教科、その教科の他分野も「目を通す」くらいのことはさせたいものです。
また、子ども自身が「わからない」問題に接することになる可能性についても「手当」が必要です。
最初にお話ししましたように、この時期は本来は「心やすらかに、入試日を迎えること」が理想です。しかし、弱点の克服に充てれば「ゲッ、わからん」に直面する可能性が高くなります。そうした場合、その日のうちに解決できるよう、「すぐに駆け込める塾」「すぐに呼び出せる家庭教師」などを確保しておく必要があります。あるいは、本人や家族が理解できるレベルの参考書、テキスト、問題集のみをを使って行うということてもよいでしょう。解決できないワ、動揺するワでは、ある教科の得点力アップのための「特化」が全体的な得点力をダウンさせることにもなりかねません。
「特化」する、させる場合には、少なくともこれらの点を踏まえて行ってください。
さて、では一般的なケース、各教科の過去問の「解き直し」に話を戻します。と書いておいて「ところで」もないのですが、「ところで」です。
ところで、この見直しですが、「国語は、一度解いた問題を解き直しても、意味がないですよねぇ」と言われることがあります。他のコラムでも「どうして国語だけ(「良くも悪くも」ではなくて「悪くも悪くも」?)特別扱いされてしまうのか」という視点でお話を書いていますが、これも同じです。
「どーして、国語だけ意味がないと思われるんですか?」
このようにおっしゃる方にこう尋ねてみると、「だって、答えを覚えていますもんねぇ」とおっしゃるケースがほとんどです。
でも、算数だって「問1の答えは『3時間5分』だと覚えておいて、ただそれを書いた」なら無意味ですよね。そうではなく、「問題文を読んで、解答を出すまでの方針を確認し、立式を確認し、計算過程を確認し、答えを確認する」という作業をしてこそと解き直す意味があるわけです。
国語も同じです。「問1の答えは『イ』だと覚えておいて、ただそれを書いた」なら無意味ですし、「問いを読んで、本文(課題文)のどこに戻るか、戻るためにはどのような手順や思考が必要なのかを確認し、本文の該当箇所と各選択肢とを照合し、だから『イ』だ」という作業をすれば、有意義な解き直しだったと言えるわけです。
ですから、「解き直すことに意味がない」のではなく、「意味のある解き直し方と意味のない解き直し方がある」わけです(「国語の復習の仕方」については、誤解が多いので、「直前期」限定ではなく「一般論」としてまたいずれタイトルを興して始めたいと思います)。

さて、ここまでは、「入試直前期の過ごし方(過ごさせ方)」について、「何をどのように使って勉強するか」についてお話ししてきましたが、次の「その2」では「具体的な日々の過ごし方(過ごさせ方)について」お話ししたいと思います。できるだけ速やかに投稿します。今暫くお待ちくさい。

中学入試 入試直前期の過ごし方 「親は……」 その2

今回は、『具体的な日々の過ごし方(過ごさせ方)について』お話しするつもりでした(「学校を休ませるかどうか」「休ませるのならいつ頃から休ませるか」「親子でどんな時間を過ごすか」などと言った内容です)が、ここへ来ていくつかの塾の指導に疑問が生じてきましたので、まず、そのことについて私見を述べておこうと思います。
私が、問題があると感じているのは(愛知県内の塾だけかもしれませんが、そのうちのいくつかは全国展開している塾なので、全国にあてはまるのではないかと思います)、次の2点です。
ひとつめは、志望校、受験校以外の過去問を「やたらと」解かせる
ふたつめは、はやく解けと「やたらに」指示を出す
まず、ひとつめの「志望校、受験校以外の過去問を『やたらと』解かせる」ですが、「志望校、受験校以外の過去問を解く(解かせる)こと」が一概に悪いと言っているわけではありません。志望校、受験校の過去問をある程度解き終えてしまった子に(「5年分でいい」とか、「いや、10年分は解かなくてはならない」とかいろいろ言われますが、出題傾向の変化がなく、解いた後でしっかりとふり返る時間がとれれば、10年以上遡ってもかまわないと思います)、他校の過去問の中から出題傾向が一致していることを「指導者がしっかりと吟味確認したうえで」解かせるのなら問題はないと思います。意図的か、偶然かはわかりませんが、私の専門の国語でも、○○校の物語と××校の物語は出題傾向が似ている(問題文の選び方が似ている、問いの設定や解答方法が似ているなど)ということはありますから、そうしたものを解かせるなら意味はあるでしょう。他教科でも同じです。しかし、いくつかの塾では、ここ数年間の同じ県内の私立中学入試の過去問を合本にし、「順に」、あるいは「ランダム」としか言いようのない選択で、「次はこれを解け」と指示を出しているようです。
愛知県内の国語で言えば、南山中学女子部志望の子に東海中学の課題作文を解かせる(書かせる)必要は全くないと言えます。南山中学女子部では、課題作文は一度も出題されていませんし、出題する予定だなどという発表もありません。もちろん、さらっと書ける子なら、時間の無駄という害のみで終わるのですが(それとて、この時期に無駄に時間を使う余裕などないはずですが)、書けずに時間を使い、なおかつそのことに悩み、自信を失ってしまう子もいるのです。また、特徴ある金城学院中学や海陽中等教育学校の入試問題を他校の受験予定者に解かせる必要はまずないと言えます(もちろん、指導者が細かく吟味し「この問いは似ている」と自信をもって言い切れるものなら解かせてもかまいませんが)。
志望校、受験校以外の過去問を「やたらと」解かせるのは、百害あって一利あるかないか、といった程度でしょうか。
ふたつめの「はやく解けと『やたらに』指示を出す」ケースですが、私は「スピードは、読むスピードにしろ、解くスピードにしろ、『徐々に』上げるもの、『徐々に』にしかあげられないもの、『徐々に』しかあげてはならないものだ」と考えています。もちろん、得点力が落ちようとどうなろうと構わないのなら別ですが。
まず、「問題文(課題文)を読むスピード」ですが、自分が理解できるスピードでしか読めないのは当たり前です。
また、「問いを解くスピード」についてですが、私はよく自動車学校の例を挙げて説明します。自動車学校では、発進までの手順をひとつひとつ教えていきます。そして、ひとつ「ずつ」実行させます。「後方確認」なんて、発信までに何度もするように指導された記憶があります(30年以上前なので不確かですが)。ですから、当然のこと、発進までには時間がかかります。路上教習中の車の後につくとイライラしてしまうこともありますし、教習車の後ろに何台もの車が数珠つなぎになっている光景もよく目にします。こんなに迷惑をかけているのに、なぜ指導者は「はやくしろ」と言わないのでしょう。なぜ「はやくする方法」を教えないのでしょう。理由は簡単です。自動車の運転で大切なのは、「はやく」ではなく「安全に」だからです。でも、ドライバーは、「徐々に」、はやくスムーズに発進させられるようになります。それも「安全に」です。これは、指導された手順を省いているわけではありません。慣れてくることで、「えっーと、次はどうするんだっけ」などと考える前に行動できるようになり、また、いくつかの行動を併せて行うことが可能になってくるからです。
問題を解くのも同じです。最初は「問いを読み、そこから本文(課題文)のどこに戻ればよいのかを判断し、あるいは、どのようにして戻ればよいのかを考え、本文の該当箇所を参照し、各選択肢と照合して、正解はどれかを判断する」という手順を、ひとつひとつ分けて覚えていきます。そのうち、問題を解く思考回路ができあがり、「徐々に」はやくなっていくのです。
そのようにしてやっと「安全に」今のスピードを手に入れた子に、いきなり「あと5分縮めろ」などという指示を出したらどうなるでしょうか。ほとんどの子が「手順を省きます」。一気に短縮するにはそれしかないからです。これは、「後方確認をせずに車を発進させる」のと同じです。事故を起こします。酷い指導者になると「なぜ、注意しないんだ」などと怒ります。自分が「はやくしろ」と言っておきながら、です。
自分は「はやくしろ」とは言っていない、と言うかもしれませんが、「時間内にできなかったら、宿題ね」という言葉の意味を考えたことがあるのでしょうか。「はやくしろ」という抽象的な指示より、より具体的に「はやくしろ」と言っているのです。ペナルティがつく分、より必死になって子どもたちはスピードを上げようとします。その結果、軽微な「事故」が「大事故」へとつながっていきます
そして、「はやく解け」という指導者が、ではそこで生まれた時間で何をしろというのかといえば「見直し」です。この「見直し」ですが、これについても考えがありますので、新しく「緊急投稿 「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 とタイトルを改めてお話ししたいと思います。

とりあえず、保護者の方は「志望校、受験校以外の過去問を『やたらと』解かされていないかどうか」「はやく解けと『やたらに』指示を出されていないかどうか」を確認して下さい。もし、そのような指示が出ていて、お子さんに上記のような「症状」が出ていたら、「気にするな」と言って上げて下さい。「志望校、受験校以外の過去問を、はやく解けという指示のもと『やたらと』解かせる」などというのは、論外です。すぐに救助してあげてください。

中学入試 入試直前期の過ごし方 「親は……」 その3

話を直前期の過ごし方に戻して、今回は「具体的な日々の過ごし方(過ごさせ方)について」お話ししたいと思います。
地域によっては、学校に行かせるか、それとも、家で勉強させるかが、問題というか悩みのタネになる場合もあると思いますが、結論から言えば、これも、これまでお話ししてきましたよう、受験生本人が「心やすらかに、入試日を迎えること」を第一に考えるべきだと思います。
つまり、本人が学校に行きたいと言えば行かせ、家で勉強したいと言えばそのようにさせるのです。
そうは言っても、ほかの受験生が勉強しているのに学校に行かせて遅れを取らないだろうかと、心配される保護者の方もいらっしゃると思います。でも、本人が学校に行きたいと考えているのに無理矢理椅子に縛り付けても勉強に身が入りません。学校に行くことで生活のリズムを保てる子、友だちと思いっきり走りまわることで受験勉強のストレスを解消している子などがいます。また、学校は学校で、6年間の小学校生活の締めくくりの時期にもあたります。ですから、本人が学校に行きたいと言えば、そのように学校に行かせてやる方がよいでしょう。ただし、学校から帰ったあとのスケジュール管理をしっかりとし、1日の生活にメリハリをつけて過ごさせるようにします。学校に行った分、家庭では集中して勉強できるように「仕向ける」のです。もちろん、インフルエンザなどが流行した場合は、休ませることを事前に約束させておきます。
参考までに付け加えておくと、私の知る範囲では、「学校に行かせた+残念な結果に終わった」という場合でも、これらを因果関係で繋いで、「学校に行かせた『から』思わしい結果が得られなかったのだ」「3学期は、学校を休ませておけばよかった」という声は聞いたことがありません(もちろん、聞こえてこなかっただけ、という可能性もありますが)。
学校を休ませる場合に注意することは、生活のリズムを狂わせないことです。学校に行っていれば、否が応でも午前8時台後半から授業が始まりますから、入試の開始時刻とさほど違わない時刻から頭を働かせることになります。しかし、家にいると、夜型の生活スタイルをずるずると続けてしまったり、前日はよく頑張ったから少しゆっくり起きてもいいだろう(少しゆっくり寝かせておいてやろう)ということで生活リズムが崩れてしまったりしがちです。ですから、起床時刻管理を徹底する必要があります。
また、夜型の方が合っているということで、夜型の生活をある程度続けるのもよいでしょうが、どこかのタイミングで朝方に変更する必要があります。数日でスッキリと切り替えられる子、もっと日数がかかる子などさまざまですから、お子さんの様子を見て、指示を出す必要があります。
もうひとつ、学校を休ませる場合に考えておきたいことがあります。先ほどは「家で勉強をさせる」と書きましたが、なかには「塾で」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。ただ、大手塾の場合は(「内緒でこっそり」というケースはあるかも知れませんが)、原則、「学校が授業を行っている時間帯は塾に来ないように」というルールになっているようです。地域や地元の学校との間での無用なトラブルは避けたいということでしょう。そこで、この時期になると、そうした大手塾の近くで「私のところでは、朝から指導をしますよ」といったチラシが配られることがよくあるようです。もともと通っていた塾がそのような指導をしてくれて、なおかつ本人が納得している場合は、そのような指導を受けるのもよいでしょう。しかし、それまで通っていた塾とは別の塾で、この時期だけ指導を受けようとする場合は、慎重に判断する必要があります。ただ「不安だから」といった理由で別の塾の指導を受けさせるのは、リスクが高いからです。これまでの指導の流れというものがあります。大手塾ほど「入塾から入試までのカリキュラム」がしっかりと組まれているはずです。そこへ「接ぎ木」をするわけですから、うまくつながらない可能性があります。カリキュラムだけではありません。先生の指導法やこれまでにその先生から受けてきたアドバイスがあります。それと矛盾するような指導、アドバイスを受けて、お子さんが混乱した場合、その混乱を解消する時間的精神的余裕がありません。ですから、私としては、「直前期だけ、別の塾へ」という選択は、あまりお勧めしません
とにかく、一にも二にも、受験生本人が「心やすらかに、入試日を迎えること」を第一に考えてください。
最後に、「受験対策を始めてからの日々を、家族でふり返る時間を取ること」をお勧めして、このコラムを終えたいと思います。
私は、家庭教師をしていますが、「入試前日に最後の指導をして欲しい」、あるいは、保護者の方から「入試前日は、自分が耐えられそうにないので、話し相手になりに来て欲しい」というご依頼を受けることがあります。こうした場合、特に後者の場合は、状況によって次のようにお話しすることがあります。
「お母さん、その日はお子さんとご家族で話をする時間はとってありますか」
「その日は、受験準備に入ってからそれまでをふり返って、ご家族でお話をされるといいですよ」
私がこのように勧めるのは、この日こそ「家族の絆」を強く深くする最良の機会だと思うからです。
「あんなことがあった」「こんなこともあった」
「あなたは、それをこう乗り切った」
「あのとき、お母さんは(お父さんは)こんな風に考えていた」などなど。
受験生本人には本人の、保護者には保護者のドラマがあったと思います。そんなドラマをふり返り、語り合う時間を取ってもらいたいと思うのです。
中学入試は「家族で臨む」試験です(保護者面談が実施されるか否かにはかかわらず)。今の時代、「家族が『一丸となって』事に当たる」という機会はほとんどないのではないかと思います。せっかくそんな機会が持てたのですから、これまでの道のりをふり返って頂きたいのです。
お父さん、お母さん、保護者の方は、子どもに対する気持ちを素直に語ってやってください。
「結果が出てから」とおっしゃるかも知れませんが、それではただの「お祝い会」か「反省会」になってしまいます。受験を控えた今だからこそ、「結果に振り回されることなく」それぞれの思いを伝えあうことができるのではないでしょうか。

親が自分のことをそこまで真剣に考えてくれていることを確認することは、子どもにとっては試験当日の力強い「支え」にもなることでしょう 。

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その1

子どもたちは、つまらないミスをよくします。もちろん、しない子もいますが、4教科の模擬試験を受けて、ひとつもミスがない子というのは、そうはいないと思います。
単位を書き間違えた、計算用紙から解答用紙に書き写す際に数字を書き間違えた、単純な足し算をミスした……。
私の専門の国語でも、あります。たとえば、「ぬき出す問い」で、本文はひらがななのにわざわざ漢字に直してしまった。正しく書ける漢字なのに、トメるところを勢いがついてハネてしまった。「あてはまらないものを選べ」という問いなのに、あてはまるものを答えてしまった。などとなど。
こんなミスを見つけると、「もっと注意しなさい。ホントに注意力がないんだから」「解いているときに注意できないなら、解き終わったら『見直し』なさい」などとついつい大人は言ってしまいます(ここで、「保護者は」とせずに、敢えて「大人は」としたのは、保護者だけでなく、塾や家庭教師の先生でも、こう言ってしまうケースがあるからです)。こういったミスを「注意力の欠如」などと性格のせいにしても、問題は解決しません。このことについては、いずれタイトルを改めて投稿します。今回は、時期が時期ですので、この「見直しなさい」という指示について、お話ししたいと思います。というのも、次のような理由があるからです。
コラム「緊急投稿 入試直前期の過ごし方『親は……』 その2」でもお話ししましたように「入試本番では制限時間よりはやく終わらせて、残った時間は『見直し』に充てろ」。そのために、「今は過去問を、制限時間マイナス5分で解け、マイナス10分で解け」という指示を出す塾、先生、保護者が多いようです。しかし、この指示がうまく機能してない、というよりも逆効果になっているのではないかと思っているからです。
「言ってしまう」という表現からもわかっていただけると思います(「不本意であることを表す」補助動詞「しまう」を使っていることから)が、私は「見直して、得点を上げるのは、かなり難しい」と考えています。つまり、「見直し」で得点を上げられるのは、ごく限られた子や、指導する側が明確な指示を出した場合に限られる、と思っているのです。
入試が近づいてくると、私は自分が指導している子に、一通り問題を解き終えたあと、「じゃあ、あと5分あげるから、見直してごらん」と指示を出してみるようにしています。とりあえず「どのようにして『見直す』か」ということは言わずにです。
これは、その子が「見直す」ことができるかどうかを見てみるためです。
するとほとんどの子は、「見直しなさい」と言っているのに、解答欄が空欄になっている部分を一所懸命「埋めよう」とします
たとえば、漢字の書き取りの「改装」の「装」が思い出せないと、「ソウ」という読みの漢字を、「創」「送」「層」「総」「相」など、思いつくまま書き出す子がいます。また、「読み取った内容をまとめて答える記述の問い」の部分が空欄になっている子は、その空欄になっている解答欄を「ジッと」にらんでいたりします。いくらにらんでも、多分答えは浮き出てこないと思いますが。あるいは、「ぬき出して答える問い」の部分が空欄になっている子は、本文のあちこちを思いつくまま「拾い読み」をして、答えを探そうとします。そして、いずれも解答欄には何の変化もなく、5分が過ぎます。結局、5分あっても得点は全く上積みされていません。ごくまれに、正しい漢字と巡り会う、ぬき出すべき場所を見つけだすこともあり、若干の得点のアップがある場合があります
また、「解答欄がすべて埋まっている子」の場合、あるいは、埋まっていない部分がある子に「空欄はひとまずおいておいて、答えが書いてある問いを『見直し』てごらん」と指示を出した場合、子どもたちは、およそ、次のような行動を取ります。
まず、解答用紙をまるで賞状を持つように両手で持ち、ながめるというものです。文字通り「見ている」わけです。そのあとにとる行動としては次のようなケースが見られます(ひとつの行動で終わってしまう子もいれば、次に挙げる行動パターンのなかの複数の行動をとる子もいます)。
ひとつめは、そのまま5分が経過する場合です。この場合は、何も指示を出さなかったケースと同じく、ただ5分が経過したわけですから、得点はアップせず、5分を有効に活用したことにはなりません。
ふたつめは、乱暴に書いた字を書き直す、書き取りの漢字のトメ・ハネ・ハライなどを丁寧に書き直す場合です。、本質的には答えは変えず、丁寧に「書き直す」わけです。こうすれば、とりあえず採点者の心証は良くなるでしょう。しかし、答え自体が変わっているわけではありませんから、もともとそれなりの字を書いていた場合は、得点はアップしません。最初に書かれていた字(の酷さ加減)によっては、×が○になるかもしれませんが(ただし、得点が上がるのは、「解答の内容はもともと正しかった」+「もともと書かれていた文字が判読不可能なほど酷かった」+「書き直したら、判読可能になった」場合に限られます。もともとそれなりの字を書いていた場合は、得点はアップしません。当然ですが)。また、「(採点者によっては×にされかねない)危なっかしい」漢字が、「非の打ち所がない」漢字に書き換えられた場合も、若干の得点のアップが期待できます
みっつめは、解答の不備を発見するケース、つまり、本当に「『見直し』て良かった」と言えるケースです。たとえば、「ぬき出して答える問い」で写し間違えていたことに気づく、「本文の内容を自分でまとめ直して答える記述の問い」で内容の不備に気づくといったケースです。これは、もちろん得点はアップします
最後に紹介するケースは、最悪のケースです。「選択肢中から選び、記号で答える問い」で、「正解は、さっき書いたこれではなく、こっちだ」と早合点し、正しかった答えをわざわざ誤った答えに書き直してしまうケースです。先ほどのケースとは逆で「『見直し』なんか、しなければ良かった」と言えるケースです。
このように見てくると、いずれのケースも、得点が上がるかどうか、どころか、下がるかどうかは、偶然に左右されていることがわかると思います。
子どもたちに、ただ「見直せ」と指示を出した場合は、「見直した結果、得点が『上がる』か、『変わらない』か、『下がる』かは、『偶然に近い形で』決まることが多い」ということです。
ですから、まず保護者の方は、自分が(つまらないミスを発見した怒りにまかせて)ただ「見直せ」とだけ言っていないかどうかをふり返ってください。そして、塾の先生や家庭教師に、お子さんが安易にただ「見直せ」と言われていないかどうかを確認してください。

次の「答案の見直しって、子どもにできるの……? その2」では、どんな子なら「見直せ」と指示を出していいか、出すとしたらどんな指示を出せばいいのか、についてお話ししたいと思います。

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その2

前回の「その1」では、子どもたちに、ただ「見直せ」と指示を出した場合、「見直した結果、得点が『上がる』か、『変わらない』か、『下がる』かは、『偶然に近い形で決まってしまう』ことが多い」ということをお話ししました。
そのことを踏まえて、「『見直す』ことを『前提に』、試験を『5分はやく終わらせろ』『10分はやく終わらせろ』という指示を出すこと」はどういうことになるのかを言い換えると次のようになります。
「制限時間よりはやく解き終えろ」と指示を出せば、それは子どもにとって大きなプレッシャーになります。もともと「時間が足りない」と感じている子がほとんどですが、「はやく、はやく」の意識がより強くなります。
その結果、つまらないミスを犯す可能性が増します。つまり、一旦解き終わった時点での得点は、その子が本来持つ実力より低い得点になります。慌てさせるのですから、当然です。
そこでミスが発見されると、今度は「見直せ」という指示を出されることになります。
でも、「見直し」では、得点が「上がるか」「変わらないか」「下がるか」は、多くの場合(前回お話ししたように)、偶然に左右されることになります。
ですから、「『見直す』ことを『前提に』、試験を『5分はやく終わらせろ』『10分はやく終わらせろ』という指示を出すこと」は、自分で「ミスを誘発させるような指示を出して」おいて、それを「あわよくば」もとのレベル(本来の実力レベル)の得点に回復させようとしているに過ぎないと私には思えるのです。
指示を守ったがためにミスをし、それが直せないと「注意力がない」と人格攻撃をされるのですから、子どもはたまったものではありません。
「注意力が散漫になるように仕向けておいて」「ほらっ、やっぱりおまえは注意力がない」と責めているわけです。
まじめに聞く子は「自分を責めます」し、反骨心のある子は「やってられないよ」と思うことでしょう。
「得点力を実力以下に下げるような指示を出しておいて、見直しという偶然に左右される作業であわよくば実力に見合った得点に復活させる」などいう手間を子どもに喰わせるより、なぜ最初から実力通りの答案を充分な時間を使って仕上げさせないのでしょうか。
私は自分が指導している子に対して、「『見直すために』、試験時間より5分、10分はやく解き終えろ」という指示は出しません。しかし、これは「見直すこと」を全否定するからではありません(効果的な「見直し」作業については、後述するつもりです。多分「その3」になります)。そうではなく、「見直しを『前提に』、試験時間よりはやく解き終えろ」という指示を出すことのデメリットの方が、『見直し』から得られる(かもしれない)メリットに比べてはるかに大きいと考えるからです。
「5分はやく」「10分はやく」終わらせるのが正しいと信じている子には、私は「せっかく50分ある(60分ある)テスト時間を、なんで自分で短くするの?」「はやく終わらせても、ボーナスポイントは付かないよ」と言うようにしています。そして、「見直し」で本当に得点がアップするかどうか、(「その1」でお話ししたように、「じゃあ、5分あげるから『見直し』てごらん」と指示を出して)自分で確認させます。その結果、5分使っても「得点が上がらなかった子、下がってしまった子」には、「じゃあ、こうしてみよう」と「その3」でお話しする方法を教えます。
「見直しができるように、5分はやく(10分はやく)解き終えなさい」という指示を出していらっしゃる保護者の方も、「子どもを陥れ、勝ち誇ったかのように子どもを責め立てたい」と思っていらっしゃるわけでは、決してないと思います。
もともとの「子を思う気持ち」が、知らず知らずのうちに、結果的に「子どもを責める言葉にならないよう」切に願います。
長々と書いてきましたが、結論を述べます。
とにかく、まずはひとつひとつの問いに集中し、丁寧に解きましょう(解かせましょう)。
そして、その結果、幸運にも時間に余裕が生まれたなら、「得点を下げず、上げる『見直し』」をしましょう(させましょう)
もし、余裕が生まれなくても大丈夫です。自分なりに(お子さんなりに)充分丁寧に解いたのですから

つぎの「その3」では、「もし、幸運にも『試験時間終了前に一応解き終えたら』どうするか(どうさせるか)』」についてお話ししたいと思います。

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その3

前回は、「見直し」は、「見直すことを前提に、自分で試験時間を短縮して行うものではない」、あくまでも、充分に「慎重に丁寧に解いた結果」、「幸運にも時間に余裕が生まれたとき」に行うべきものだ、というところでお話しを終えました。
では、時間に余裕が生まれたら、どのように見直せば良いのでしょうか
正しい、というか、効果的な「見直し」は簡単です。
「その1」で、「『見直し』で得点が『上がるか』『変わらないか』『下がるか』は偶然に左右されることが多い」とお話ししましたが、要はこのような「偶然に左右されない」ように「見直せば良い」のです。
そのためには、「何をどう見直すか」、「どんな順序で見直すか」を事前に決めておくこと、「見直すためにどんな準備をしておけばよいのか」を知り、作業をしておくことがポイントになります。
1 何をどう見直すか
これまでに受験した模擬試験をふり返り、どんなミスが多かったのかを調べます。
「その1」にも書きましたが、「漢字の書き取り」でトメ・ハネ・ハライが不明瞭なため×をもらうことが多かったのならそのチェックを(本来なら、書き取りの答えぐらいは丁寧に書く癖をつけておきたいのですが)。「本文中の言葉をぬき出して答える問い」で写し間違えることがよくあったのなら、そのチェックを(これも、直前期となる前に、利き手でない方の手の指で一字一字押さえながら写すようにしておきたいものですが)。あるいは、「本文の内容を読み取って、自分でまとめる記述の問い」で問いに合わせて答えを締めくくらなかったために減点されたことが多かった。たとえば、「〜こと。」「〜から。」の不備や、空欄の前後につながるように答えなくてはならないのにそうしなかった、答えの形が指定されていたのにその指示を守らなかったなどといったことです。そうしたミスが多かったのなら、その点のみに絞ってチェックします。
「見直し項目」を決める際のポイントは、「どんな子でも」「どんな精神状態の子」でも、「客観的に」チェックできる内容に限ることです。
「見直す」とは、「自分の解答を『他人の目』になって確認すること」です。ですから、お子さん自身が「他人の目になれること」に絞って「見直し」をさせるようにするとよいのです。
「記述の問い」の解答内容に不備はないかどうか、選んだ「選択肢」が本当に正しいかどうか、といった「内容面」については「これが正しい」という基準を子ども自身が持つことは不可能です。そんなものが持てるくらいなら、もうすでに満点です。にもかかわらず「内容面」にかかわる「見直し」をさせる、つまり、「何が正しのかといった基準」を持たないまま内容に踏み込んで「見直そう」とすると、「すべて誤っているように思えてしまう」などといった状態に陥る可能性があります。
ですから、子どもに「見直し」を指示するのは、子どもが見て(子どもが「考えて」ではありません。あくまでも「見て」です)、正しい正しくないの判断ができるものに限るべきなのです。
もし、どうしても「内容もチェックさせたい」と考えるならば、あとの「見直すためにどんな準備をしておけばよいのか」で詳しく説明いたしますので、その方法をご参照ください。
追記 「選択の問い」の見直しを否定するものではありません。子どもたちの中には「問題用紙に書き込んだメモでは、ウに○が付けてあるのに、解答用紙にはエと書いてしまった」といったミスをする子もよくいます。そんな子には「メモと解答を照合せよ」という指示を出してもかまわないのは当然です。これは、客観的に判断できますからね。
2 どんな順序で見直すか
何を見直すか、その項目が決まったら、それに優先順位をつけておきます
もちろん、これまでにミスが多かった順にしますが、一番は「受験番号」のチェックでしょうか。ミスの多寡より、間違えては絶対にいけないことですから。
ですから、「まず、受験番号を確認し、次に○○をチェックし、それでも時間があったら○○をチェックし……」というように決めておきます。
それでも時間が余ったら、「机の上に腕を置き、そこに頭を載せて突っ伏してろ」と私は指示を出します。もともと、私は「ひとつひとつの問いに集中し、丁寧に解こう」と指示していますから、そこまで時間が余ることはまれだとは思っていますが、気力が充実する本番だといつもよりはやく解き終えることもあると思います(これは、私が、ひと月もふた月も前から「試験時間のマイナス5分で解け、マイナス10分で解け」なとど言う必要はないと思う理由のひとつでもあります。練習で2、3分足りなければ、本番はマイナス2、3分になると考えてよいと思います。受験後の子どもたちの話を総合すると)。事前に決めておいた項目のチェックを終えても解答用紙を見ていると、せっかく客観的に判断できる項目のみに絞ってあったはずなのに、ついつい「内容面」が気になり始めます。「内容面」に「敢えて」踏み込ませないためには、解答用紙を「見ない」こと、「見るな」と指示を出しておくことが一番です。といって、不用意にキョロキョロしていてカンニングを疑われてはいけないので、「突っ伏せ」という指示になるわけです。
次は、「内容面に踏み込んで『見直す』際』にポイントとなる「3 見直すためにどんな準備をしておけばよいのか」に移ろうと思いましたが、それを書くと1回のコラムの文字数を超えてしまいそうですので、新たに「答案の見直しって、子どもにできるの……? その4」を興すことにします。お手数ですが、そちらに移動して下さい。
とりあえず、ここまでが私の「オススメ」ですので、ポイントをおさらいしておきます。

それは、「『どんな子でも』『どんな精神状態の子』でも『客観的に』正しい正しくないを判断できる『見直し』項目を決め、それを『どんな順序で』チェックしていくのかも『事前に』決めておくこと」です。

「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その4

前回の「その3」では、「答案の安全な『見直し』」についてお話しいたしましたが、今回は、「多少リスクを負ってでも『内容面に踏み込んだ見直し』をしたい(させたい)」場合に、できる限りリスクを低減させる方法についてお話ししたいと思います。そのためには、問題を解いているときに、多少の作業が必要になります。
「その3」の項目1と2に続くものとして、次の3をお読み下さい。
3 見直すためにどんな準備をしておけばよいのか
前回の「その3」で「内容面に踏み込んだ見直しはさせない方がいい」とお話ししましたが、どうしても「内容面のチェックもさせたい」とお考えの場合は、「解いている最中にしておくべき作業」についても指示を出しておく必要があります。
というのは、「内容面」のチェックというと、たぶん「選択の問いのチェック」となると思うのですが、この「『選択の問い』での見直しミスで、正解だった答えをあえて書き換えて得点を落とすケース」がよくあるからです。
このように「『選択の問い』で、『見直したために』が×になってしまうのは、なぜか」その原因は単純です。
まず「選択の問い」の正しい解き方について、簡単にご説明しておきます。詳しくは、また、タイトルを改めましてお話しする機会があるかと思いますが、今回は「見直し」に関係する範囲で簡単にご説明します。
「選択の問い」の正しい解き方を簡単に図示すると「問い本文選択肢」となります。順に説明すると、
 問いを読む。
 問いの答えはどれかを検討するために「本文中の参照すべき場所」を探す
 その部分をよく読み、各選択肢と照らし合わせてふさわしい選択肢はどれかを判断する。
となります。ここでのポイントは、「選択肢を比較検討し、正しいものはどれかを判断する基準を『本文』から得ること」です。「本文を読み取って答える」わけですから、「抜き出す問い」だろうと、「本文から読み取った内容を自分でまとめる記述の問い」だろうと、そして、いまお話ししている「選択の問い」だろうと、本文を参照するのは当然です。
逆に言えば、「本文を参照する」という手順を省くと、間違えやすくなるわけです(まぁ、選択肢中から選ぶので、何分の1かの確率で「当たってしまう」こともありますから、絶対に間違えるとは言いませんが)。
さて、ここまでお話しすると、先が読める方なら「○が×になるメカニズム」も推測がつくと思います。
そうです、初めに問題を解いたときはちゃんと「本文を参照したうえで、答えた」のに、見直すときには「本文を参照せずに、答えを書き換える」と、「が×になってしまう」のです。
ですから、「選択の問い」を「安全に」「見直す」ためには、「じっくりと読んで得た答え」を「瞬間的な判断で書き換える」ことのないように、ひと工夫が必要になります。
では、どうするか。
先ほど、「『選択の問い』の正しい解き方」についてお話ししましたが、このようにして「正しい解き方で解いた答え」は、「見直し」では「『絶対に』手をつけない」ようにしておけばいいのです。つまり、自分で記号を決め、その記号を問題用紙に書き込んでおくのです(解答用紙には、「受験番号」「解答」以外は書いてはならないため、この記号は問題用紙の方に書きます。「解答用紙に書く」と、何らかの不正の跡と見なされる場合がありますので、注意して下さい)。
また、「正しい解き方」はわかっているが、「本文のどこを参照すればよいかわからなかった」ので、「多分これだろう」という推測で答えてしまった(たとえば、「こんなことが書いてあったような気がする」と記憶に頼って答えた。あるいは、「アかイかのいずれかまでは絞り込めたのだが、本文から「決め手」を得られないまま、とりあえずアと答えておいた。など)ものにも、別の記号を決め、その記号を書き込んでおきます
もちろん、「見直し」の際には、「本文を参照して選んだわけではない」後者をもう一度解き直します。時間の許す範囲で、「本文の参照すべき部分」を探すわけです。
このようにすれば、「じっくりと読んで得た答え」を「瞬間的な判断で書き換える」というミスを防ぐことができます。また、「正しい方法」で答えられなかったものを「正しい」方法でその「正しさ」を確認したり、誤った答えを「正しい」答えに修正したりすることが可能になります。
とはいうものの、私は次のように考えているということを再度確認して、このタイトルでのコラムを締めくくりたいと思います。
「見直し」は「見直すことを前提に、自分で試験時間を短縮して行うものではない」、あくまでも、充分に「慎重に丁寧に解いた結果」、「幸運にも時間に余裕が生まれたとき」に行うべきものだ。
子どもに「見直し」を指示するのは、子どもが見て、正しい正しくないの判断ができるものに限るべきだ。
そのためには、「『どんな子でも』『どんな精神状態の子』でも「客観的に正しい正しくないを判断できる『見直し』項目を決め、それを『どんな順序で』チェックしていくのかも『事前に』決めておくことだ。

慎重に丁寧に問題を解き終え、受験番号を確認し、書き取りの漢字とぬき出しの答えを確認し(もちろん、「よしっ、ちゃんと書いてあるぞ」と確認し)、「ふーっ」とひと息ついたら「やめ!」という試験管の声が聞こえた、というのが理想です。

中学入試 入試直前期に成績が下がった?!

中学入試も、関西地区は終了し、中部地区は真っ最中、関東地区は直前になりました。
関西の受験生、保護者の皆さん、お疲れさまでした。
結果はどうでしたか。
志望校合格を果たした方は、少しのんびりしつつ、小学校生活をしっかり締めくくってください。
また、不本意な結果に終わった方も、少しのんびりしたら、目標に向かって頑張りぬくことができたことを、きちんと胸にしまっておいてください。これから何かでくじけそうになったら「あのときの自分」を思い出し、その「かつての自分」から勇気をもらいましょう
私が指導した子のなかにも、中学入試で不本意な結果に終わった子もいます。そんな子で、大学受験を控えた時期に、こんな年賀状をくれた子がいます。
「くじけそうになったり、怠けそうになったりすることがあります。でも、そんなときには、中学受験の頃を思い出して、先生の顔を思い浮かべると、小学生の自分があんなにがんばれたんだから、高校生になった自分があれ以上にがんばれないわけがないという気持ちがわき上がってきます」と。
ところで、直前期を迎えつつある方。
タイトルには「成績」という表現を使いましたが、模試のないこの時期ですから、「成績が下がった」は正確な表現ではないですね。正確には、「克服したはず」「できるようになったはず」の問いが、ここへきて「また」できなくなってしまった、ということはありませんか。
「そんなことはないよ」とおっしゃる方は、結構。そのまま、突っ走ってください。
「実は、そうなんだよ」という方。
妙なところで、「時間を節約しよう」としていませんか。
例えば、国語。
読解スピードが、やたらと速くなっていませんか。
記述の問いで、下書きを「くちゃくちゃ」に書いていませんか。
選択の問いで、本文の確認もそこそこに、選択肢の検討に入っていませんか。
「焦り」というネガティブな表現は控えて、「意気込んでいる」「気合いが入っている」としましょうか。いずれにせよ、入試を目前に控え、「やる気」が変なところでスピードアップをもたらしていないかどうか、ふり返ってみてください。
できなかったことが「できるようになった」ときのこと。できなかったタイプの問いが「克服できた」ときのことを思い出してください。
解けない問いが解けるようになったのは、「一見、遠回りのような思考過程を経たり、作業を行ったりするようになったからだった」のではないですか。
算数でも、頭の中だけで処理しようとしていたことを、表に書いて考えてみた、図を描いて考えてみた、そうすることで克服できたのではないですか。
今は、どうですか。
「そんなことをしなくても、自分はもう克服したんだから」と、それらをやめてしまったり、ただ形だけのおざなりなものになってしまっていませんか。
保護者の方の中にも「この過去問を解くのはもう3回めなのに、1回めはさておき、2回めにはできていた問いが、なんでできなくなっているの」とショックを受けている方もいらっしゃると思います。
でも、お子さんの力が低下したわけではありません。肩に力が入り「最短距離で」正解にたどり着こうとして、実は「間違った道」に、「また再び」入り込んでしまっていると思われます。「あなたが、最短コースだと思っている道は、『最短なのではなく、間違っている』んだよ」と「叱責ではなく、静かに」話してやってください。
どのようにした結果、解けなかった、答えられなかった、その問いが解け答えられるようになったのか、解けるようになったときのことを思い出させてやってください
先に挙げた国語の例で言えば、「自分が理解できるスピード以上の速さで文章を読めば、ただ目で追っているだけ」になってしまいます。「ゆっくりと読むべきところ、立ち止まるべきところ、そして、スピードを上げて読んでもいいところ」とメリハリをつけて読むべきです。そして、ちゃんと解けているときは、そうしていたはずです。
記述でも、込み入った内容を整理して、さらにそれを制限字数内に収めてまとめるためには、下書きが必要です。そして、そのレベルの問いに答えられたときには、そうしていたはずです。
選択肢中から答えを選ぶ問い。時間を省こうと思えば、どれだけでも省ける問いです。極端な話、五分の一、四分の一で「当たり」を狙うことだってできます。でも、このタイプの問いでしっかりと得点するためには、問いを読んだら、まず選ぶべき選択肢はどれかを判断する「基準」「物差し」を得なくてはなりません。その「基準」「物差し」は、当然、本文から得ます。そして、そこから得た「基準」「物差し」がしっかりとしていればしているほど、安全に正しい選択肢はどれかを判断できるのです。そして、そうした問いがちゃんと解けていたときは、そのようにきちんと本文に戻っていたはずです。
子どもは、時に、思わぬ行動に出ることがあります。
長年受験生と接してきて、ここで挙げたような状態になってしまう受験生に出会うことも、少なくありません。
「焦っている」といったマイナスの気持ちからばかりではなく、「よし、やってやろう」というプラスの気持ちから、突拍子もない解き方を自ら「発明」してしまうことがあります。その、もとにある「やる気」「意気込み」「合格したいという気持ち」は大切にしつつ、「正しい解き方」に戻してやってください

保護者の方こそ「焦らないで」ください。決して、お子さんの力が低下したわけではないのですから。

苦手科目の克服方法について

「大きな目標」「小さな目標」を決めて、取りかかりましょう。
まず、その「苦手な」教科が、「克服すべき」教科なのかどうかをしっかりと見極めましょう。
こう書くと、「苦手なんだから、克服するのが当然でしょう」と思われるかもしれませんが、必ずしも「苦手=克服すべき」とは、言えません。
私は家庭教師を生業にしていますが、「他教科に比べ、得点率が低い」から「克服しなくては(させなくては)」というお考えの保護者の方にお目にかかるケースがよくありますが、「受験」ということに限定すると、「足切り」にかからない限り、総合得点で合格点に達していれば苦手教科があっても構いません。全教科、おのおの合格点に達しているというのは理想でしょうが、そのようなお子さんは「第一志望」の学校でで考えれば、ほとんどいないと思います。
ですから、まずは「本当に克服すべき『苦手』教科」なのか、「個性と言える程度の『苦手』教科」なのかをはっきりと見極めます。子どもを追い込んでしまったり、保護者の方が必要以上に悩まないように。

次に、それでも「克服すべき」と判断されるケースですが、まず「大きな目標」として、受験までに「どのレベルまで持って行くか」といった長期目標を定めます。苦手教科以外でどこまで得点力を伸ばせるかから、「苦手」教科の得点力をどこまで伸ばせば良いのか、目標を決めるのです。
「ゴールが見えない」ことほどつらいことはありません。ですから、「見える程度の距離の目標」を設定します。この「見える程度の」というところが、ポイントになります。

「大きな目標」が決まったら、「小さな目標」を決めます。
一週間の中で、その苦手教科の学習に割く時間を決めるのです。具体的には、何曜日と何曜日の何時から何時まで、あるいは、毎日何時間などと決めるのです。
大切なのは、「小さな目標」は、苦手教科は「分量」ではなく「時間」で計画を立てることです。
学習効果は、ほぼ「集中力」で決まります。
得意教科、得意分野は、集中力を「自分で」引っぱることが可能です。しかし、不得意教科、不得意分野は、それが難しいと思われます。ですから、「何時までがんばろう」「何時になったら、終わりだ」と「時間」で目標を設定するのです。
これは、私のオリジナルではなく、海保博之氏が『学習力トレーニング』(岩波ジュニア新書)で勧めていらっしゃる方法ですが、私が指導している生徒に勧めてみて、効果があると感じている方法です。

補足
ここでお話しした、毎週や毎日といった「小さな目標」を、得意分野は「分量」で決め、苦手分野は「時間」で決めるという方法は、受験生だけでなく、大人でも有効だと思います。

私自身、家庭教師や講演会の講師、いろいろな相談におこたえするといった「その時、その場にいて、そのときどきに適切なことをお話しする」のがお仕事になるもの以外に、模試や問題集の執筆、過去問解説の執筆といった「原稿というものを仕上げなくてはならない」お仕事もしていますが、その執筆のお仕事の中には、実は、得意なものと苦手なものがあります(出版社の方がご覧になると差し障りがありますので、どれが得意でどれが苦手なのかは内証ですが)。
苦手な分野の執筆は、「時間」で目標を設定すると、乗り切りやすいように思います。とりあえず、「今日は、自分で課したノルマは達成したのだから、一杯やろう」などと区切りをつけると、充実した日を送れたように感じ、「また、明日もがんばろう」と思えます。得意分野の執筆に関しては、「とにかく、この一本の原稿を仕上げたら、一杯ね」と自分に言い聞かせると、何時まででもがんばることができます。

お母様方も、家事仕事に応用されてはいかがですか。
お掃除が苦手な方は、「毎日、何分」で目標を設定し、得意な方は「毎日、何部屋」で目標を設定するのです。お掃除以外にも使えると思いますよ。


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